COLUMN

設計士が魅了される建築 【とらや工房/東山旧岸邸】

こんにちは、ディレクトです。

建築に携わる仕事をしていると、行く先々で何よりも建物に目がいきます。

思いがけず「素敵だな」と思える建築に出会えると、とても嬉しくなります。

これまでに何度もそのような経験をしてきましたが、今日はその中から、強く心惹かれた建築「とらや工房」と「東山旧岸邸」をご紹介します。

とらや工房」と「東山旧岸邸」は、建築家の内藤廣氏によって設計された建物で、静岡県御殿場市の約5,600坪の広大な自然の中に建っています。

とらや工房」は、言わずと知れた和菓子の老舗「虎屋」が運営する、和菓子カフェです。

敷地の入口には、昭和2年からこの地に建つ落ち着いた趣の山門があります。

その山門を通り、竹林の中の散策路と自然を楽しみながら5分ほど歩いてくと、工房が見えてきます。

工房は、庭を取り囲むように緩やかな扇形のカーブを描き、販売所や和菓子を作る厨房はガラス張り、喫茶スペースは半屋外で、庭や空と心地よくつながるオープンな建物となっています。

外観はモダンに見えますが、内部は木をふんだんに使用した和菓子カフェらしい落ち着きと軽やかさがあります。

とらや工房をさらに奥へと進んでいくと、「東山旧岸邸」があります。

東山旧岸邸」は、元首相・岸信介が73歳から晩年を過ごした自邸として1969年に建てられました。

設計は、近代数寄屋建築の巨匠と言われた吉田五十八氏

首相を退任した後に過ごした家ですが、要人を招く機会があったことから、建物はパブリックスペース(居間、和室など)・プライベートスペース(寝室など)・サービススペース(台所など)でゾーニングがされています。

居間や食堂の窓は引き込み戸で、それが額縁のような効果をもたらし、開放感抜群の大開口から見える庭はまるで絵画のよう!

訪れた秋は、美しい紅葉を見ることができました。

食堂には12人座れる大きなテーブルがありますが、岸信介はテーブルの中央やお誕生日席ではなく、庭の景色が綺麗に見える“角の席”がお気に入りの指定席だったそうです。

とらや工房・東山旧岸邸とも、自然に触れる心地よさを建物にも取り込んで設計されており、椅子に腰かけて景色を眺めていると、「ずっとここに居たい」と思わせてくれる場所でした。

最近の住宅においても、「家の中から、外の景色・庭・空がどう見えるか」が重要視されるようになってきています。

とらや工房と東山旧岸邸での感動を心に留め、居心地の良さを最大化できる家づくりを大切にしていきたいです。